東京地方裁判所 昭和52年(ワ)4670号 判決 1978年3月15日
原告 株式会社拓銀
被告 国
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は原告に対し金六八一、五〇〇円および昭和五二年六月七日より支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 被告敗訴の場合、担保の提供を条件とする仮執行免脱の宣言。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 債権者訴外横浜市信用保証協会、債務者訴外有限会社室伏製作所間の横浜地方裁判所昭和五一年(ケ)第一九二号土地、建物任意競売事件につき昭和五一年一〇月二二日に実施された競売期日において、原告は別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)について最高価競買人となり、同日右裁判所に競買保証金金六八一、五〇〇円を納付した。
2 右裁判所は同月二九日競落期日を開いて競落許可決定をなし、原告に対して代金支払期日として同年一二月二日を指定したが、右期日に原告が代金支払義務を履行しなかつたので、再競売命令を下し、再競売期日として昭和五二年一月一四日を指定した。
3 本件建物は昭和五一年一二月二〇日頃何者かに取毀されて滅失し、再競売をなすことはできなくなつた。
4 右裁判所は本件建物の滅失のため前記再競売期日の指定を取消し、右競買保証金を売却代金として昭和五二年五月一七日配当を実施した。
5 よつて原告は被告に対し、1記載の競買保証金およびこれに対する訴状送達の翌日たる昭和五二年六月七日より支払済に至るまで民事法定利率の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因1、2の事実は認める。同3の事実のうち、本件建物が滅失したことは認めるが、滅失の日は不知。同4の事実は認める。
理由
一 請求原因1、2の事実は当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によると、本件建物は再競売命令後再競売期日前に滅失したことが認められ、4の事実は当事者間に争いがない。
二 右の事実によると、再競売手続は本件建物滅失のため取消されたものの、競売手続開始決定そのものは取消されることなく、代金交付手続が実施されたのであるから、原告としては、もはや本件保証金の返還を求めることはできないものというべきである。
けだし、最高競買申立人が競買申出の拘束力から解放されて競買保証金の返還を求め得るのは、競落不許可決定の確定したとき(民事訴訟法六八四条)、六七六条一項により新競売期日が指定されたとき、六七八条により競買を取消したときの外は競売申立が取下げられたときか競売手続が異議(五四四条)・抗告(五五八条)、五五〇条一号ないし三号、六五三条、六五六条二項等により取消された場合に限られ、上記の場合以外に競売手続内で競買保証金の返還を求める根拠はないからである(従つて、原告としては、本件保証金の返還を求めるには、その前提手続として競売手続開始決定の取消を求めて執行方法の異議(民事訴訟法五四四条)を申立てるべきであつたといえよう。)。
よつて原告の本訴請求はこの点において、既に失当といわねばならないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤安弘)
(別紙) 物件目録<省略>